源氏物語~帚木~(18)


優美な歌も詠まず、思わせぶりな手紙も書かず、とても無愛想で薄情に出て行ってしまったので、

つまらない気がして、意地悪く私を許さなかったのも、自分を嫌いになって欲しいとでも思っていたのではないかと、

さすがにそうは見えなかったのですが、衝撃のあまりそんな風に疑ってみたりもしました。

着るものは、いつも以上に気を配った色合いや仕立て方がとても理想的で、

私を捨てて出て行った後まで気にかけて世話をしてくれたのでした。

そんな状況でも、決して私を見放すようなことはないだろうと思って、あれこれ言ってやりましたが、

女は完全に縁を切るでもなく、身を隠して途方に暮れながらあちこち探させようというわけでもなく、

きまり悪くないような返事をしては、ただ、

『かつてのようなお心のままではやり過ごすことはできません。

改心して浮気をやめ、落ち着くというのならまた一緒に暮らすこともできましょう』などと言ったのですが、

そうは言っても私と別れることはできないだろうと思っておりましたので、

しばらく懲らしめてやろうという気持ちで、改心しようなどとも言わず、強く意地を張っているうちに、

女はひどく嘆いてそのまま死んでしまいましたので、冗談では済まされないことだと後悔しました。

生涯の妻としてあてにするような女性は、あのような人がよいのだろうと思い出されます。

ちょっとした風流ごとも実生活の大事なことも、相談し甲斐があったし、

龍田姫と言っても良いほど染め物の技術もあり、

織姫にも劣らないほど裁縫の技術も持ち合わせていて素晴らしかったのです」

といって、とてもしんみりとした気持ちで思い出しています。

中将の君は、

「その織姫の裁ち縫いはさておき、彦星との長い契りにあやかればよかったのに。

なるほど、その龍田姫のあやなす錦には並ぶものがないでしょう。

ちょっとした桜や紅葉も、季節の色合いが似つかわしくなくてパッとしないのは、

露ほども見栄えがしなく、台無しになってしまうものだ。

その奥さんも露のようにはかなく死んでしまうのだからね。

だから妻を選ぶのは難しい世の中だといって決めかねるのだなあ」

と話をはずませなさるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


死んじゃったよ!!!

死因が本当に精神的なものなのかどうかは知りませんが。

もしそうだとしたら、ええ、冗談では済まされないですよ。

といっても、直接手をかけて殺害したわけではないですが。

 

さて、龍田姫と織姫が出てきました。

織姫は裁縫の名手とされますが、七夕伝説で有名なのでいいですよね。

三省堂「詳説古語辞典」で龍田姫(竜田姫)を引いてみます。

いまの奈良県生駒いこま郡にある竜田山を神格化したもの。竜田山の女神。竜田山が奈良県の西方にあり、五行説では西は秋に当たることから、秋の女神。この神が木々を紅葉もみじに染めると信じられた。

ということで、龍田姫(竜田姫)は染め物の名手でもあるわけで、ここでは比喩に取られているわけです。

 

しかしようやく左馬の頭の話が終わった、と思ったら、もう一つエピソードを話し出します。笑

いい加減にしろ!(╬ಠ益ಠ)ゴルァ!!

というわけで、あと2~3回左馬の頭の話が続いて、その後ようやく頭の中将の出番です。

 

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