源氏物語~帚木~(3)


長々と雨が一日中降り続けてもの静かな宵に、

殿上の間にも人はとても少なくて、光る君の例の御宿直所も、いつもよりはのんびりとした感じがしていたのですが、

灯火を近くに書物などをお読みになる時に、近くの置き戸棚の中の、色とりどりの紙に書かれた手紙を

中将の君が引っぱり出してしきりに見たがるので、

「見せても差し支えないものは少し見せてあげよう。まずいのもあるといけないから全部はだめだよ」

とお許しにならないので、

「その油断してみっともないとあなたが思っていらっしゃるものこそ見たいんだがね。

普通のなら、私も自分の身分なりに書き交わして見ていますよ。

それぞれが恨めしい時々に、相手を待っている風な夕暮れ頃の手紙にこそ見所があるでしょう」

と恨みがましいことをいうのですが、

特別に大切な手紙で、どうしてもお隠しになりたいものなどは、

こんな置き戸棚などに無造作に置きなさるはずもないので、

ここにあるのはさほどのものでもない、気軽なものばかりに違いありません。

中将の君がそれらの一部を見て、

「よくもまあ様々な手紙がございますね」

といって、当てずっぽうに、これは誰それのかと尋ねてくる中に、言い当てることもありました。

見当違いのことも色々と考え合わせて疑ってくるのをおかしくお思いになるのですが、

光る君の返事は言葉少なで、あれこれごまかして相手の女性が誰であるかをお隠しになるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


頭の中将が光源氏のところにある女性からの手紙を半ば強引に見ています。

もし現代に置き換えるなら、人の携帯を奪ってメールをチェックするような感じでしょうか。

メールだと名前が出ちゃいますけどね。

雨の夜に女性の話が始まりましたので、ここら辺が「雨夜の品定め」の導入部分となります。

「桐壺」の巻ではセリフがとても少なかったですが、ここから増えていきます。

では次回をお楽しみに。

 

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