源氏物語~帚木~(4)


光る君が「あなたこそ、たくさんの恋文を集めていらっしゃるのでしょう。

少し見てみたいものだ。そうしたらこの戸棚も喜んで開くだろう」とおっしゃると、

「御覧になる甲斐があるのはほとんどないでしょう」と申し上げなさりつつ、

「この人は完璧だというような女性はなかなかいないものだということがだんだん分かってきましたよ。

ただうわべばかりの感情で筆を走らせ、

その時々に応じた恋文の返事ばかりはどう書けば良いかを心得ていて、それなりに良いものも多いとは思いますが、

それも、本当にその方面に優れた人物を選び出そうという時に、

絶対に選ばないわけにはいかないというような女性はほとんどいないですね。

女は自分が知っていることだけをそれぞれが得意になっては人をバカにしたりして、みっともないことばかりだ。

親などが寄り添い娘をかわいがって、将来美しく育つことを期待されながら深窓に育っている間は、

ただちょっとの才能を噂に聞いて心を動かすこともあります。

実際、顔立ちがよくおっとりしていて、まだ若くて特に仕事もない間はちょっとした芸事なんかも、

人の真似をして一つくらい風情あるように身につけることもあるにはあるでしょう。

そして、近くで世話をする侍女などが、欠点などは隠して、良いことばかり取り繕ってもっともらしく語るので、

そんなことはないだろう、などと見もしないうちから当て推量に判断するわけにもいきません。

それで、本当だろうかと見てみた時にがっかりしないということはまずないよ」

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


頭の中将が語る女性論が始まりました。

この女性は「利口ぶっているばかりで・・・」という論は兼好法師の『徒然草』にもあります。

が、これを書いているのが女性である紫式部であるところが面白いですね。

誰かを想定して書いているのでしょうかね。

あるいは、紫式部がそう思っているというより、

男の人はそう思っているんでしょ?

という一つ上の階層から冷笑混じりに言わせているセリフでしょうか。

何にしても興味深いですね。

 

<<戻る   進む>>

 

Posted in 古文

コメントは受け付けていません。