源氏物語~若紫~(2)


寺の様子もたいそうしみじみとしたものでした。高い峰の奥まった岩穴の中に聖は入っていました。

光る君はそこへお上がりになると、お名乗りにもならず、ひどく粗末な身なりをしていらっしゃいましたが、

誰だかはっきり分かるご様子だったので、

「なんと畏れ多いこと。先日、お呼びくださった方でいらっしゃいますかな。

今やこの世のことは何も考えておりませんので、加持祈祷なども忘れてしまいましたのに。

どうしてこんな山奥までいらっしゃったのでしょうか」

と驚き騒いで、にこやかに光る君を見申し上げています。非常に尊く徳の高い聖でした。

薬を作って飲ませ申し上げ、加持祈祷などをして差し上げているうちに、日が高く昇りました。

ちょっと立って外に出て、景色を見渡しなさると、思いのほか高い所で、

あちこちに僧坊があるのが下の方に丸見えでした。

「ちょうど、このつづら折りの道の下に、よそと同じ小柴垣だが、よそよりもきちんと巡らしていて、

綺麗な屋根や廊下などが連なっている、庭の木々なんかも風情があるのは誰が住んでいるのかな」

とお尋ねになると、お供の者が、

「これは、何とかいう僧都がここ二年ほど籠もっている所でございます」

「立派な人物が住んでいるのだろうな。それにしても、あんまり粗末な恰好をしすぎてしまったな。

その僧都に自分の素性を知られたら嫌だな」

などとおっしゃっていました。

小綺麗な子どもがたくさん出てきて閼伽棚に水をお供えしたり花を折ったりするのもよく見えました。

「あそこに女がいたぞ」

「まさか。僧都が女と一緒に暮らすなんてことはないだろう」

「女とはどういう関係なんだろう」

と口々に言い、崖を少し下りて覗く者までいました。

光る君は勤行をなさりつつ、日が高く昇るにつれて、病はどうなることか、とお思いになっていると、

「何かしら気を紛らわせて、あまり病のことを気になさらないのがよろしいかと存じます」

と申し上げるので、後方の山の方に出て、京の方を眺めなさるのでした。

※雰囲気を重んじた現代語訳となっております。


峰たかく、深き岩の中にぞ、聖入り居たりける。

と書かれています。

うーん、どういうこと?笑

前回、「僧侶の住まいは北山の少し奥深くに入った所でした」と書かれていました。

なので、「峰たかく」で早くも「ん?」となるのですが、

山全体が高い峰であり、その少し奥深くに住んでいる、ということでサッサとパス。

で、「聖が深い岩の中に入っていた」とはどういうこと?

大きな岩に囲まれた深い奥に庵を作って住んでいるのかな、とも思いましたが、

文字通りに解釈すればやはり、岩穴の中に住んでいることになるし、こんな絵もありました。


※画像:源氏物語の世界 再編集版 様より拝借。

何だか釈然としないものはありますが。

だって、家から出られないほど腰が折れ曲がって衰弱しているんでしょう?

てことは、ずーーーーーっと家に籠もりっきりなんでしょう?

こんな岩穴が家だとしたら、雨が降ったらどうするんですかね。冬は越せるんですかね。

そういう時は誰かが他の場所へ移してくれるのでしょうか。

それとも、出家して死の準備も整っているので、このまま死んでもそれでよし、ということでしょうか。

まあいいや。笑 (よくないけど…)

 

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